嗅覚
たった一つの“におい”で、ちびゴリの世界は壊れた。
私たちの日常は匂いであふれている。
今日は鼻が詰まって匂いがしないな~とか。
パパの靴下臭いな~とか。
そんな感じ。
嗅覚については深く考えたこともなかった。
それが…
人間は心と体のバランスを崩すと、あんなにも恐ろしいことになるんだなって身を持って経験しました。
ちびゴリは
ちびゴリ6歳の夏休み。
デパートに二人で遊びに行った時の出来事でした。
大好きなマックのポテトを買おうと、楽しくはしゃでいたちびゴリが急に『オエッ!』とえずき始めました。
驚き、尋ねると『臭い💦吐きそう』と。
その時いたのは一階で、二階のフードコートのニオイをキャッチしてえずいていたんです。
一階の時点で…?
体調が悪いのかな?
さっきまで元気やったのに💦
帰ろうか聞くも、ちびゴリはポテトが食べたいと。
偏食王のちびゴリ、食べられるものはわずか。
そんなかでもポテトだけは風邪を引いてもどんな時でも食べられる神食!
その時もポテトなら大丈夫なのかなと思い、フードコートへ。
すると、ステーキ屋さんの前で大きくえずき、前かがみになるちびゴリ。
慌てて抱きかかえその場を離れました。
『今日体調悪いね?マックはまたにしようね』と話し、おもちゃ屋さんの方へ。
その場を離れるとコロリと元気になるちびゴリ。
元々ニオイには敏感だったけど、こんなのは初めてで驚きました。
それからの日々は家でゲームをしたり、外で遊んだり楽しく過ごせていました。
そして夏休みも終盤。
友達の家へ遊びに行ったとき。
お昼ご飯の時間。
ちびゴリがカップ焼きそばなら食べられる為、友人が用意してくれ、お湯を注いだその時でした。
『うわぁぁぁぁ!くさい!くさい!オエッーーー!!』
わんわん泣きながらえずき私にしがみつく、ちびゴリ。
二人でベランダで外の空気を吸って落ち着かせ、そのまま何も食べず、その後は元気にお友達と遊ぶちびゴリ。
家の食事でそんなことにはなったことがないし、ニオイがなければ元気なちびゴリ、疑問に思いながらも時間が経ち、夏休みが終わりました。
幼稚園が始まって一週間。
運動会の練習が始まりました。
そして、二週間の間に3回の早退の電話がかかりました。
1度目は給食の前になると吐き気へ訴えます。
2度目も同じ。
3度目は運動会の練習中、お友達の汗のニオイに吐き気を訴えています。
でも相変わらず家では元気なちびゴリ。
食事もしっかりとれていました。
入園したての時はニオイに敏感で外出先のトイレに行けないこともしばしば。
少ししたらまた落ち着くだろう、なんて軽く考えていました。
早退の翌週、ちびゴリは風邪を引き39度の発熱。
小児科で薬をもらい家で安静にし3日を過ごしました。
そして、、
解熱と同時に物凄い嗅覚過敏が出てきました。
『っぎゃぁぁぁぁぁぁああ!くさい!気持ち悪い!助けてーーー!』
ちびゴリは発狂状態で叫びました。
突然の出来事に私もパニックに。
我が子に何が起こってる?!
『何が?💦何がくさいの?💦』
錯乱状態で応えられない、ちびゴリ。
全室の窓を開け換気。
少し落ち着き、小児科に連れて行こうと、ぐったりするちびゴリを外へ連れて出ると『オエーーーー!くさいよーー!吐く!』
え?外だよ?どうしたら…
そうか…外も無臭ではない。
土のニオイ。
車の排気ガスのニオイ。
色々なニオイが混ざり合っている。
泣き叫ぶちびゴリをなんとか車に乗せる。
車内でも苦しそうなちびゴリ。
小児科では大学病院に翌日紹介になりました。
帰宅後、ちびゴリは横になっていました。
でも急に何かのニオイにえずき、自分を落ち着けるため必死にアクエリアスをガブガブ飲んでいました。
この時、アクエリアスだけでも飲めていてよかった。
高熱の時はもちろん、嗅覚過敏でちびゴリは何も食べれられずにいました。
そして、パパが帰ると、仕事の後のパパのニオイで発狂状態。
パパも疲労プラスちびゴリの様子を受け入れられない。
辛そうにしていました。
食事は私達も少しでもニオイの少ないおにぎりにし、旦那と交代で別室食べました。
それでも、臭い臭いと泣く、ちびゴリ。
一番困ったのがトイレとお風呂でした。
トイレに行きたい、ちびゴリ。
でもまず廊下に出ることができません。
もちろん窓全開でフル換気しています。
それでもわんわん泣きながらトイレへ。
でもトイレでゲロっとなり、泣きながら引き返してくる。
その繰り返し。
トイレが無理なら、お風呂でしてみようや!
もうお庭でもええよ!
そう声をかけるも、この時のちびゴリは耳に入りません。
トイレに扇風機をかけ、さらに空気の循環をし、なんとか泣きながらトイレを済ませ、寝室に。
お風呂では、ボディソープやシャンプーの匂い、そして柔軟剤すべてのニオイに発狂。
洗ったばかりの布団のシーツのニオイにもえずきました。
そして、一番酷い時はベッドにいても身の置き場がないほど、ニオイに苦しみもがく、ちびゴリ。
私が近づくと『こっち来ないでーーーーーー!!!オゥエッ。扉開けないでーーー!!助けてーー!お願いママ助けてーーーー!!!!』
と叫びアクエリアスを飲んでは啼泣、えずき。
この時ほど自分の無力さを情けなく思ったことはありませんでした。
自分の可愛い息子がこんなにも苦しんでいるのに、抱きしめることも、手を握ることも、傍にいることも、同じ空間にいることさえも許されない。
扉を少し開けて、苦しむちびゴリを見ながら、涙をおさえることしかできませんでした。
『ちびゴリ…大丈夫…ここにおるからね…ごめんね』
普段から、ちびゴリは不機嫌になったり、怒ったりすることのない子で親の私たちにも優しい物言いをする子だったので、発狂したちびゴリは、まるで違う子を見ているようでした。
そんな苦しい中、少しでも落ち着くと『ママ、ごめんね。すぐ元気になるから大丈夫だよ』と声をかけてくれました。
“誰かこの子を助けて!嗅覚過敏を私に全部ちょうだいよ!”
心で叫びました。
そして、大学病院の日、もちろん連れて行くのも至難の業。
車で30分。
ちびゴリは鼻にタオルを押し付けて横になり耐えていました。
(タオルのニオイさえも辛くえずくことも)
到着しても、沢山の車のニオイにえずき泣きじゃくる、ちびゴリを抱きかかえて院内へ。
もちろん院内も人のニオイで発狂。
そしてなんとか診察。
苦しみが強い中採血もし、連日何も食べれていない為、低体重、貧血と…。
ドクターより
『今回の症状は、ASDによる感覚過敏です。
でも、ここまで酷いのは稀ですね。見たことがありません。
薬で、嗅覚を抑えましょう。でも精神薬になるので最初は少量からですぐには効きません。徐々に増やして調整しましょう。』
と。
正直今すぐにでもこの苦痛を取ってほしい!と思っていたので落胆しました。
帰宅途中、『お腹空いた…ポテト食べたい』と言う、ちびゴリに喜んだ私は急いでマックのドライブスルーへ。
しかしポテトを受け取った瞬間『くさーーーーーい!いやだぁ!捨てて!吐きそう!!』と大発狂。
私は慌ててトランクの方に向けて投げ、窓を全開にして帰りました。
“お腹が空いてるのに食べられないって…
この小さい子が。
いつまで続くの?”
『お腹空いた…。お腹空いた…。苦しい…』
シクシク泣く、ちびゴリを見てとうとう我慢できなくなった私は、
『ごめんね。お腹空いたね。辛いね。ママ何もしてあげれんくてごめんね。絶対良くなるから。大丈夫。傍におるからね。ごめんね』
と泣いて言いました。
すると、ちびゴリは『ママ泣かんでええよ。大丈夫よ。心配かけてごめんね』
こんな時まで私を気遣う、ちびゴリ。
二人でわんわん泣いて帰りました。
その後、少しだけ落ち着いた時に、冷めて匂いが落ち着いたポテトを食べることができました。
しかし、先生が言われた通り、ちびゴリの嗅覚は簡単には落ち着かず、ここから3カ月間続き、病院以外で外に出ることはできませんでした。
もちろん、誰かを家に呼ぶこともできません。
ちびゴリが来訪者のニオイに発狂するから。
薬を少しずつ増やし、最終的に6年生が飲む量と言われるとこまで薬を増やし、やっと外に出られるようになりました。
もちろん食べ物があるところへ行けるようになったのは、もっとずっと後のことです。
ここには書ききれないほどのことがまだまだあります。
夜中眠っていたのに深夜4時に急にクサイ!と訴え、起きて発狂したこと。
3カ月の間、ちびゴリに吐息がかからないように、夫婦でマスクをして過ごしたこと。
(ちびゴリはマスクの布のニオイにも耐えられなかった)
ちびゴリにとっても私にとっても、地獄という言葉以外では表わせない程の恐ろしい時間になりました。
家族みんなでリビングにいられること、一緒に食事がとれること、お風呂に入れて、トイレに行けること。
我が子を抱きしめ、傍にいられること。
これがどれだけ有難く幸せなことなのかが身に染みて分かりました。
このことがきっかけで、後に、人生を変える恩師と出会うことができます。
そして、この恩師に、なぜこのような恐ろしいことが起きたのか教えてもらうことになります。
また、追々書いていければと思います😊
長文読んでいただきありがとうございました💛
またよろしくお願いします🦍💗